海外遠征史




11.3度目の正直

 ハクチカラがワシントンバースディハンデに勝って以来36年の月日が経ち、馬主、調教師、騎手、厩務員、牧場にわたるすべての面で純国産だったフジヤマケンザンが、香港での国際G2競争、香港国際カップに勝ったのが、平成7年12月10日でした。36年振りの海外重賞制覇が達成されたのは森厩舎の海外制覇に対する努力が実ったものと言えます。フジヤマケンザンの勝因はなんだったのか、森厩舎の遠征スタイルはどんなものか、ここで見ていくことにします。

 森厩舎の開業は平成5年、それから約2年で偉業を成し遂げたということになりますが、森調教師は調教師免許を取得した時から海外遠征に興味を持っていたそうで、開業した年の暮れの香港国際カップにすぐ、ナリタチカラ、フジヤマケンザン、ドージマムテキを参戦させようと登録させました。結局この年はナリタチカラが選出され、ケンザン、ドージマの2頭は補欠となってしまうことになります。(ナリタチカラはこの年7着)翌年には再びフジヤマケンザンを出走させ、蛯名正騎手を背に4着と若干の期待を持てる結果を出します。しかし翌年の春の遠征では10着に敗退、再び挑んだ秋の国際カップでは9番人気の38.65倍という人気薄で、レースはスタート後から先行し直線で前の2頭を抜き去りコースレコードでゴールします。これがケンザンの海外重賞制覇までの簡単な経緯でした。

 現在、香港への空輸は約4時間程度、空輸自体は飛行中は地上での馬運車輸送よりも揺れることはなく快適に輸送できる手段であると言えます。そのため森師は国内の遠征と大きく変わるものではないと考えていたようで、出来ることなら直前輸送でレースに望みたいと考えていました。レースのパンフレットに「1週間前に入厩すること」という記載があったため、ケンザンは2回目までは週間前には入厩をさせていたのですが、オーストラリアの馬がレース直前に入ってきたことが判明し、主催者側に確認、直前入厩でも構わないという許可をもらいます。そして3回目の遠征は4日前に入厩しました。森師が直前輸送にこだわった理由は香港、シャティン競馬場の調教馬場のダートが全く日本の砂とは異なっていたこと、そしてコース形態からして追い切りが実質不可能だったことと言っています。そして3回目の遠征では美浦トレセンの検疫所で強めの調教をした後、日本を出発するというスタイルを取りました。それに加え、ケンザンはおっとりしたタイプの馬だったため神経質なところはなく、3度目の輸送にも慣れ、日本での状態をキープしたままレースに望めたという点が、3回目にして結果を出せた理由として挙げられます。またローテーション的にも1回目の遠征ではジャパンカップから中2週の強硬なスケジュール、それに対し2年目は天皇賞を避け、富士ステークスをステップに遠征をする、完全に香港を目標としたローテーションでした。これもまた幾度の経験から引き出した結果なのでした。

 そして馬の方の経験だけでなく鞍上の蛯名正騎手の経験もケンザンの勝利を導いたものとなります。初回の遠征時は、出遅れた上に大外をまわって追い込むレース、2度目は好位に付けながらも直線で前を塞がれ脚を余らしたものでした。武豊騎手もフランス遠征時にダンスパートナーで経験したことと思いますが、海外のトップレベルの騎手が集まるレースでは直線では意地でも内を空けるようなことはなく、日本での最終コーナーから内をつくような甘いレースはさせてはくれません。実際に過去2度のレースでそういう経験をした蛯名騎手は3度目のレースで好位からいったん外に出し、そこから前を差しきるという競馬をしています。これもまた経験から生まれた好騎乗でした。こういったいくつかの馬と人が学んだものがあって、ケンザンの勝利が生まれた、こう言えると思います。

 国内のG1勝ちもないフジヤマケンザンが欧米のステークスウィナー相手に圧勝することが出来た。この事実は今後の日本馬の遠征のお手本となるもので、森調教師自身、今後G1レベルの馬を遠征させる際にはケンザンの遠征を何度も顧みることになるのでしょう。これからもスキーキャプテンでケンタッキーダービーも経験した森調教師は、香港だけでなく欧米へも次々と有力馬たちを送り込んでくれるはずです。そしてその森調教師の元にいるシーキングザパールが、秋には米国の競馬場を疾走しているかもしれません。

日付馬名性齢レース名距離騎手人気結果
1994.12.11 フジヤマケンザン 牡7 香港国際カップ 香港 G2 芝1800m 蛯名正義   4
1995.4.1 フジヤマケンザン 牡8 クイーンエリザベス
2世カップ
香港 G2 芝1800m 蛯名正義 2 10
1995.12.10 フジヤマケンザン 牡8 香港国際カップ 香港 G2 芝1800m 蛯名正義 8 1



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