海外遠征史




12.遠征にまつわる諸話

 今回は遠征時に問題となる様々な面について出発時から順を追って簡単に触れてみることにします。

1.費用
 主に人馬の輸送費、滞在費、保険料、餌代、通訳代などがあります。負担はもちろん全額馬主が行い、クラブ所有の馬(タイキブリザードのように1口馬主募集馬)では各会員が全額を負担するケースがほとんどです。国内の勝って賞金を獲得出来そうなレースをパスして遠征を行うわけですから、1口会員からは不満の声が出る場合が多いようです。ただしJRAには海外遠征奨励金制度があり、重賞馬やG1馬には遠征の費用の援助があります。なお具体的な金額についてははっきりしません。

2.検疫
 国内で約1週間の検疫を行い、成田を出発。現地到着後にまた簡単な検疫となります。この間、関係者と馬との接触は制限されます。検疫場内に馬場があれば、引き運動を行うことが出来ますが、ない場合は運動はほとんど出来ません。見なれない周囲に驚き入れ込む馬もいますし、通常の運動を数日休まないといけないためにそれなりのハンデを負うことになります。また帰国後は約1週間、白井の検疫厩舎に入り、美浦に移動した後にさらにトレセン近くの美浦牧場にて約3週間の着地検疫を行います。

3.輸送
 空輸は一般客は同乗しない貨物専用機を使います。数名が同行できるようにコックピットの後ろに数席が用意され、スチュワーデスはいないもののパイロットが食事を出してくれるようです。馬のいる部屋は気温は十数度、3畳ぐらいの箱の中で到着を待ちます。輸送中の入れ込みもありますが、これに加え問題になるのは到着地と室内との気温差で、これにより体調を崩す輸送熱という発熱が起こることがあります。

4.帯同馬
 1頭のみの遠征だと輸送や検疫の間、かなりの時間を1頭だけですごさなければならないため、落ち着きがなくなる馬がいます。そのためにもう1頭別の馬を連れていき、馬をリラックスさせてやる方法を取るケースがあります。しかし費用がかさむためこれを行うケースは現在ほとんどありません。帯同馬ではありませんが、アメリカではポニーを使って馬を落ち着かせるということを行っており、タイキブリザードの2度目の遠征ではこれを利用して馬を落ち着かせることに成功しています。

5.入厩
 シンボリルドルフやダンスパートナーのように現地の調教師に馬を完全預託する場合と、現地厩舎の馬房を借りて滞在する場合があります。前者は完全預託のため調教は預託厩舎の調教師がスケジュールを組んで行い、日本の調教師の指示はあまり(ほとんど?)反映されません。後者については国内と変わらず調教師の細かな指示の元、調教を行うことが出来ます。ただ現地の調教習慣には沿うことにはなります。

6.水と飼い葉
 ただでさえ輸送疲れで食欲が落ちているのに、水質の違いや飼い葉の違いでさらに食欲を失ってしまうことがあります。そのために日本国内から遠征期間内の分の水や飼い葉を馬と共に輸送する形が取られます。ただこれは短期の遠征の場合で、長期の遠征(半年程度以上)になると現地の水と飼い葉に慣れて、国内と変わらない食欲になってきます。短期遠征でも馬によっては数日で慣れる馬もいます。

7.蹄鉄
 レースに出るにはレース用の蹄鉄に履き替えさせる必要があります。しかし蹄鉄は世界共通の方法で打たれているわけではありません、各国様々です。爪を極端に短く切ってしまうところもあれば、歯鉄(スパイク)を履かせるところもあり、蹄鉄の打つ角度も各国微妙に異なってきます。蹄鉄の打ち方が異なると見た目でも馬の歩き方が変わるそうで、当然レースでもフットワークに変化が見られるはずです。これによって体調を崩したと言われるのがサクラローレルです。(この話はローレルの部分で詳しく書きます。)



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