海外遠征史




4.日本史上最強の障害馬

 一昨年、フジヤマケンザンが香港国際カップを勝ったとき、36年振りの海外勝利という報道が目立ちました。しかしながら、日本から海外に遠征した馬で、レースに勝った馬というのは実はこれまで3頭(平成9年3月現在)いるのです。まずはハクチカラ、そしてフジヤマケンザン、もう一頭は障害馬フジノオーです。このフジノオーとはどんな馬だったのでしょう。

 3歳戦を平地でデビューしたフジノオーは4歳秋まで走り平地成績15戦1勝と不振でした。しかし故障もなく丈夫な体質、食欲の旺盛さ、スピード不足だがスタミナが十分と思われる走りっぷり、そして障害と関係の深い血統的背景から、新たな舞台を求め4歳暮れに障害馬へと転向します。当初は10戦3勝とまずまずの成績といった感じでしたが、11戦目で中山大障害に挑戦、結果は落馬に終わったものの、秋の中山大障害は当時の強豪タカライジンを破り勝利をものにします。

 こうして秘められた素質を開花させたフジノオーは以降、6歳時は11-3-2-0の素晴らしい成績を収め、7歳春まで中山大障害4連覇、7歳時には67kgの斤量をモノともせず大差で中山大障害を制するという偉業をやってのけました。そして海外へ、アメリカではなくヨーロッパへと旅立つことになります。

 その当時までの遠征はすべて米国の平地レースでしたが、フジノオーは現在でも世界最大の障害レースといわれるイギリスのグランドナショナル障害競争へと向かうことになります。まずは前哨戦のマイルドメイオブフリートCCに出走し(結果は着外)中1週にてグランドナショナルというローテーションを踏みます。そしてグランドナショナル出走となるのですが、その時のグランドナショナルは出走馬47頭、距離は7220m、総障害数30で結果はそのうちすべての障害を越えてゴールした馬が12頭というものでした。

 フジノオーのレースの内容の方は国内での走りのように確実に次々と障害を越えていったものの、次第に疲労の色が出始めちょうどレースの半ばの15番目の障害に来たところでついに脚が上がらなくなり、そのままリタイアとなってしまいました。この背景には英国内で3戦以上を経験していない外国馬はトップハンデを負担しなければならないという規定のため、フジノオーが本命馬より約3kg重い斤量76.2kgを背負うという非常に不利な条件で出走しなければならなかったということもありました。ただこの時フジノオーに騎乗したキング騎手は次のようにフジノオーを讃えています。「小粒だが、素晴らしい素質のある馬だ。健闘したが、斤量と重馬場が応えたようだ」と。地元の記者からは「豆挑戦者」というニックネームを付けられたフジノオーは完走こそなりませんでしたが、イギリスプレスにも強く印象を与えこの最大の障害競争を終えました。

 それ以降は主にフランスを中心に走り遠征後約1年の9歳となったフジノオーは昭和42年4月18日に障害としては初めての海外勝利を成し遂げることになります。さらに秋にも1勝をあげ、通算14戦2勝の海外成績を収め引退しました。勝った2勝はいずれも9頭立ての少頭数だったこともあるのでしょうが 、ここでもまたハクチカラと同じように環境との適合という課題を1年もの時間をかけて乗り越えたこと、そして環境という最大の壁を乗り越えられれば日本馬の能力は海外でも十分通用することを示したものでした。フジノオー以降、海外の障害レースに出走した日本馬は未だに1頭もいません。平地の馬の遠征は盛んになってきた今日ですが、障害でもぜひイギリスに連れていきたいと感じさせる馬の出現が待ち遠しく思います。

フジノオー海外遠征全成績

日付馬名性齢レース名距離頭数結果
1966.3.17 フジノオー   牡8 マイルドメイオブフリート 英国 4000m 12 着外
1966.3.26 グランドナショナル 英国 7190m 47 中止
1966.4.6 ナショナルハント 英国 3200m 8 着外
1966.6.24 レドラ賞 仏国 4300m 11 6
1966.7.6 リゴレット賞 仏国 4000m 26 21
1966.9.12 ドウーブロン賞 仏国 4000m 13 8
1966.9.29 ラソローニュ賞 仏国 4000m 10 6
1966.10.10 アンギャン大障害 仏国 5000m 21 6
1967.2.16 牡9 カネア賞 仏国 3500m 12 12
1967.3.8 ジムクロー賞 仏国 3600m 12 10
1967.4.18 レーヌ賞 仏国 3800m 9 1
1967.5.9 ルペリゴール賞 仏国 3500m 12 6
1967.9.5 クリスチャンドレルミト賞 仏国 3500m 9 1
1967.9.28 ラソローニュ賞 仏国 4000m 12 11




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